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【2021年版】世界遺産検定まとめノート公開中(1・2級、マイスター向け)

世界遺産検定1級 まとめノート1-6.世界遺産に関係する諸概念

6.世界遺産に関係する諸概念

(1)真正性(authenticity)

  • 文化遺産に求められる概念、文化的背景の独自性や伝統を継承していること
  • 1964年ヴェネツィア憲章の考えを反映
  • 1993年「法隆寺地域の仏教建造物群」登録後、日本が「真正性に関する奈良会議」を主導
  • 1994年「奈良文書」が採択、真正性の考えが柔軟化
  • 遺産の保存は地理や気候、環境などの自然条件と、文化・歴史的背景などとの関係の中ですべき
  • その文化ごとの真正性が保証される限りは遺産の解体修復や再建等も可能

(2)完全性(integrity)

  • 全ての世界遺産に求められる概念
  • 世界遺産のOUVを構成するために必要な要素が全て含まれている
  • 長期的な保護のための法律などの体制も整えられている
  • 完全性を証明する条件(作業指針に3点が規定)
    ①OUVが発揮されるのに必要な要素が全て含まれているか
    ②遺産の重要性を示す特徴を不足なく代表するために、適切な大きさが確保されているか
    ③開発あるいは管理放棄による負の影響を受けていないか

(3)文化的景観(Cultural Landscapes)

  • 1992年第16回委員会で採択された概念
  • 世界遺産条約第1条の「遺跡」の定義中の「自然と人間の共同作品」に相当
  • 人間社会が自然環境による制約のなかで、社会的、経済的、文化的に影響を受けながら進化してきたことを示す遺産
  • 自然の景観と人工の景観の両方を含む
  • 1993年ニュージーランドの「トンガリロ国立公園」で初めて認定
  • 「人類と環境との交流を示す顕著な見本」として登録基準ⅴの認定も多い

<文化的景観の3カテゴリー>

  • 意匠された景観
    庭園や公園、宗教的空間など、人間によって意図的に設計され創造された景観
  • 有機的に進化する景観
    社会や経済、政治、宗教などの要求によって生まれ、自然環境に対応して形成された景観。農林水産業などの産業とも関連している。既に発展過程が終了している「残存する景観」と、現在も伝統的な社会の中で進化する「継続する景観」に分けられる
  • 関連する景観
    自然の要素がその地の民族に大きな影響を与え、宗教的、芸術的、文学的な要素と強く関連する景観

(4)グローバル・ストラテジー

  • 正式名称「世界遺産リストにおける不均衡の是正及び代表性、信頼性の確保のためのグローバル・ストラテジー
  • 1994年第18回委員会で採択
  • 地理的拡大
  • 産業関係、鉱山関係、鉄道関係の強化
  • 先史時代の遺跡群の強化
  • 20世紀以降の文化遺産
  • ストラテジーは当初文化遺産を想定していたが、自然遺産や複合遺産も対象
  • 複数保有国は推薦間隔を空ける、登録少ない分野を推薦、非保有国の登録推薦と連携

(5)シリアル・ノミネーション・サイト(Serial Nomination Site)

  • 連続性のある遺産を全体としてOUVを有するものとして登録した遺産
  • 個々の構成資産がOUVを持っている必要はなく、全体としてOUVを持っていればよい
  • 最初の登録遺産にOUVあれば、追加のため複数年に渡る審議を前提とした推薦書もOK

(6)トランスバウンダリー・サイト(Trans-boundary Site)

  • 当初自然遺産を想定し提案されたが、文化遺産にも用いられる概念
  • できる限り関係締約国が共同で登録推薦書を作成し、共同管理委員会・機関等を設立して遺産全体の管理・監督をすることが強く推奨
  • 国境を接する遺産であっても別々の遺産として登録されているものは含まれない
    ・イグアス国立公園(アルゼンチン・ブラジル)
    サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路(スペイン・フランス)

(7)世界遺産条約履行のための戦略的目標「5つのC」

  • 4つのC:条約採択30周年の2002年ブダペスト世界遺産に関するブダペスト宣言」
  • 5つのC:ニュージーランド第31回委員会
  • 世界遺産センターは1年間の活動を5つのCの分類に当てはめて報告している
    ・Credibility:信頼性
    ・Conservation:保存
    ・Capacity-building:能力開発
    ・Communication:情報伝達
    ・Community:共同体

2.人間と生物圏計画(Man and the Biosphere program:MAB計画)

  • 生物圏保存地域では、生物多様性を3段階の区域に分けて重層的に保護
    ・核心地域(コア・エリア):保全する区域そのもの
    ・緩衝地帯(バッファー・ゾーン):保全を妨げる活動を制限
    ・移行地帯(トランジッション・エリア):保全を基調とし持続可能な開発可
  • 条約は核心地域(コア・エリア)と緩衝地帯(バッファー・ゾーン)の概念を援用
  • 2005年作業指針改定で、バッファー・ゾーンの設定を自然・文化遺産双方に厳格に要求
    ※バッファー・ゾーンは登録範囲に含まれないが、ゾーン変更には委員会承認が必要
    ※バッファー・ゾーンを設定しない場合はその理由を登録推薦書に明記

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