世界遺産検定1級 まとめノート2-5.知床・石見銀山・小笠原諸島
13.知床
(1)概要
- 登録:2005年、基準:910
- 地球で最も低い緯度で海水が結氷する季節海氷域
- 海には季節海氷(流氷)、暖流の宗谷海流と寒流の東樺太海流の境界線が海洋生物を育む
- 陸には知床連山、湖沼や湿原、河川、硫黄孔原、森林
- 海、陸、川に及ぶ独特の食物連鎖
(2)歴史
- 人が住み始めたのは1万年前ごろ
- 800年前から北海道の民族と海洋狩猟民族が吸収同化しアイヌ民族(と考えられている)
- アイヌ民族はシマフクロウ・シャチ・ヒグマを神として信仰、130年前まで手つかずの自然
- 明治時代開拓が進むも、知床半島の厳しい自然環境でほとんど影響なし
- 1914・1935・1949年の3度の入植全て失敗、1966年までに開拓者撤退
- 1964年自然公園法に基づき国立公園に指定
- 1977年自治体の「しれとこ100平方メートル運動」(日本初のナショナル・トラスト運動)
(3)季節海氷域
(4)地形と気候
- 北米プレートに太平洋プレートが潜り込むことで生じた隆起と火山活動で半島形成
- 最高峰羅臼岳(1,660m)、知床連山が東西を分断
- オホーツク海ウトロ側は火山噴出物が浸食の海食崖、フェーン現象と宗谷海流で温暖少雨
- 根室海峡羅臼側はなだらかな海岸、夏場は太平洋からの湿った南東風で多雨、海霧で低温
- ウトロ側は観光、羅臼側は漁業が主要産業
(5)動植物
- 冬に海氷下に生じる濃塩水(ブライン)の降下で活発化した対流により下層の栄養塩が海面へ
- 海氷氷解が始まる春頃にアイス・アルジー等の植物プランクトンが大増殖
- それを餌とするオキアミ、小エビ等の動物プランクトンが増殖
- それを餌とする小魚や貝類が繁殖
- 近海にはサケ、マス、アザラシ、オオワシ、オジロワシ等が集まる
- 遡上するサケ・マスは森林のキタキツネ、ヒグマ、シマフクロウの餌となる
<針広混交林と植物の垂直分布>
- 海岸線にはハマナス、イワベンケイ等の温帯植物
- 低標高地ではミズナラ、シナノキなどの冷温帯性落葉広葉樹
- 標高が上がるにつれ、トドマツ等の亜寒帯性常緑針葉樹林、混成した針広混交林
- 高標高地ではダケカンバ等の亜高山帯
- 森林限界の標高1,100mを超えるとハイマツの低木林帯
<多様な動物>
14.石見銀山遺跡とその文化的景観
(1)概要
- 登録:2007年・2010年範囲拡大、基準:235
- 銀生産がアジア、ヨーロッパと日本との商業的・文化的交流を生み出す
- 銀鉱石の枯渇と連動し伝統的技術の鉱山活動は停止、結果として考古学的遺跡が保存
- 「残存する景観」「継続する景観」、歴史的土地利用の在り方を示す
- 「銀鉱山跡と鉱山街」「街道」「港と港町」の3分野、14の構成資産
- 銀鉱山跡と鉱山街:銀山柵内、清水谷精練所跡、手掘り坑道の「間歩」、石見城跡
- 街道:銀鉱山と港間で整備(2本の運搬路)
- 港と港街:鞆ヶ浦港、沖泊港、湯野津温泉街
- 薪炭材の供給源の森林など豊かな自然環境も残存、鉱山と人々の暮らし、文化的景観
(2)歴史
- 1526年銀山発見、博多の豪商神屋寿禎によって開発
- 16c前半戦国大名大内氏の支配、神谷もその保護のもと、中国との貿易
- 1533年朝鮮から伝来した灰吹法で生産量が増大
- 1540年代には職人集団の形成、日本の銀精錬の最先端となる
- 1550年代大内氏が内紛で滅亡、有力大名の争奪戦
- 1562年に毛利氏が制し、街道を整備
- 1600年関ヶ原の戦いの後、徳川幕府の支配下、奉行大久保長安が鉱山経営
- 大森地区の整備、銀山経営を「山師」と呼ばれる業者に委ねる
- 1620~40年代に最盛期、年間1,000~2,000kgの銀生産(ヨーロッパにも石見の銀が流通)
- 明治維新後の1869年、政府によって個人業者へと払い下げ
- 1923年休山
(3)保存上の課題など
- ICOMOSは登録に際し、基準ⅴに関するさらなる調査、証拠文書の提出を要求
- 観光問題整理、建造物保護政策明文化、考古学的戦略確立、水質汚染調査、車道施行等を勧奨
→街道を史跡に追加、大森地区音景観を重要伝統建造物群保存地区に追加などの保全体制整備
→2010年委員会で登録範囲が拡大
(4)構成資産
銀山柵内 |
銀鉱石採掘から精錬まで一連の工程が行われた銀山跡、龍源寺間歩、清水谷精錬所跡、石銀遺跡、清水寺、唐人屋敷跡など |
大森・銀山 |
銀山隣接谷間の鉱山街、伝統的な木造建築の集落、南の要害山に近い「銀山地区」、北の代官所跡に近い「大森地区」 |
16c前半に博多に向けて銀を積みだした港、湾に2つの小島、1つの島に神屋寿禎建立の弁天をまつる神社 |
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沖泊・温泉津 |
沖泊は狭隘な入江の港、温泉津沖泊に隣接する温泉街と港 |
石見銀山街道温泉津・沖泊道 |
16c後半銀搬出と物資運搬のため整備、途中の西田集落を中継地、全長約12km、石段・側溝・石切場の跡が残る |
15.小笠原諸島
(1)概要
- 登録:2011年、基準:9
- 長期間隔絶した環境での進化や適応拡散、極めて高い固有種率(陸産貝類、維管束植物)
- 化石種と現生種との比較から進化系列や種の多様性の歴史的変遷を追える
- 本土から1,000km離れ、大陸と一度も陸続きになったことがない海洋島
- 登録陸域:聟島列島、父島列島、母島列島の3列島の小笠原諸島、南北の硫黄島、西之島等を含 む30余りの島々の陸域(※父島母島の集落均衡、硫黄島、沖ノ鳥島、南鳥島は登録範囲外)
- 登録海域:父島属島の南島周辺の一部海域(総面積79.39㎢)
- バッファ・ーゾーンの代わりに東京湾まで続く「世界遺産管理エリア」を設定
- プレートの沈み込みで形成される「海洋性島弧」⇔ガラパゴス諸島、ハワイ島は「火山島」
(2)歴史
- 1593年安土桃山時代の武士で南洋探検を行った小笠原貞頼により発見
- 1675年江戸幕府が調査、父島・母島に「此島大日本之内地」という碑を設置
- 長らく無人だったが、1800年代に欧米捕鯨船が立ち寄るようになる
- 1830年に5人の白人と25人のハワイ人が入植移住
- 1876年国際的に日本の領土と認められる
(3)生態系
- 在来の爬虫類:オガサワラトカゲ、ミナミトリシマヤモリ(2種のみ)
- 両生類:皆無
- 在来の哺乳類:オガサワラオオコウモリ(1種のみ)
- 固有種、固有亜種は多く、昆虫の約25%、陸産貝類の94%が固有種
- 特に固有族のカタマイマイ属は種類が多く、同所的適応拡散や列島間における適応拡散
- 維管束植物の在来種441種のうち161種が固有種
- ブナ・カシ・シイなどは皆無
- ザトウクジラ、マッコウクジラなど23種、全世界の海生のクジラ種の約3割
- ミナミバンドウイルカ、ハシナガイルカ
- 鳥類195種のうち14種が絶滅・準絶滅危惧種
- 固有種1種(メグロ)、固有亜種7種(オガサワラノスリ、オガサワラヒヨドリほか)
- 「小笠原諸島世界自然遺産地域科学委員会」の管理計画
①優れた自然環境の保全
②外来種による影響の排除・回避
③人の暮らしと自然の調和
④順応的な保全・管理計画の実施 - 外来種問題:ノヤギ・ノブタは根絶、グリーンアノールは課題